今さらながらではありますが、ログハウスとは「何者」であり、その「快適性」は何に由来しているのか、についてまとめてみましたので、お時間のある方は目を通してください。
ログハウスとは
ログハウスとは「丸太組構法」を用いた建築物のことで、在来工法と同様の構造(軸組み)で、丸太材を柱として用い、筋交いなどで補強して建築するポストアンドビームやピーセンピースとは異なります。
「丸太組構法」という言葉は昭和61年3月29日に施行された建設省告示第859号で用いられましたが、それまであまり使われることは無かったようです。
丸太や角材(板ではない)を水平に積み上げ「耐力壁」を構成し、耐力壁相互の交差部で丸太材などを構造耐力上有効に組み合わせる構法のことをいいます。
日本では飛鳥時代に建てられた正倉院勅封蔵の校倉造りが最も有名で、これがまさに「ログハウス」です。
ログハウスの歴史
日本では天平勝宝年間(西暦750年くらい)に正倉院が建てられたと言われていますが、小規模なものはそれよりもかなり以前から存在していたといわれています。
ただし、用途としては高床式の穀倉や倉庫だったようです。その後は寺院の経蔵などとして用いられたようです。
いずれにしても、木材が持つ「調湿機能」が食物や経典などの保存に適していた事が覗えます。
近年では1933年に建てられた上高地の帝国ホテル(1977年に建替)が大規模な校倉建築として有名です。
なお、世界的にはヒマラヤ周辺や中国南部、シベリヤ東部、スカンジナビア半島、東ヨーロッパ、ロシア、南ドイツ、スイス、オーストリアなどに存在しており、アメリカには1638年にスウェーデン人によってもたらされたと言われています。当時は貧しい人たちが住まう住居としてログキャビン(窓や煙突が無い、粗末な造り)と呼ばれていました。
建築基準法とログハウス
昭和61年の告示以前のログハウスは「特殊な構造方法」(在来の軸組構法と対比して)と位置づけられていた為、旧建築基準法が定める「大臣認定」を取らなくては建築が許されませんでした。(昭和45年から昭和61年までに大臣認定を取得したのは10社)
別荘地のコテージを中心にログハウスの実績が増えた事、需要が増加してきたこと、外圧による輸入促進が国の政策になった事などから、丸太組構法技術基準を定め(建設省告示)この基準を満たせば、大臣認定を必要としないで建築確認申請が出来るようにしました。
その後、平成2年(1990年)適用範囲の拡大と基準の内容の合理化を図る改正が行われ、更に平成14年(2002年)5月15日、新しい「技術基準」が告示され現在に至っています。
ログハウスの特徴
安全で安心
私の提供するログハウスはほとんどの部材が天然木で出来ているので、化学物質を原因とする人への健康被害に遭う事はありません。壁構造で建物を支えますので強度は高く、阪神大震災や北海道沖地震でも倒れたログハウスはありませんでした。
また、万一火災を起こしても厚い壁の表面が燃えると炭化層を形成し、壁が燃え尽きる事はなく、さらに燃焼の際、有毒ガスが発生しません。
優れた調湿機能で心地よい暮らし
調湿機能については1300年も前から知られていた木の特性です。全て木で作られたログハウスは長い歴史とともに進化し、M&Nのログハウスもこの調湿機能を十二分に発揮しています。
さて、一般に私達が使っている湿度という言葉は「相対湿度」をさしています。大気中の水蒸気の量をそのときの温度で空気が含むことが出来る最大の水蒸気量(飽和水蒸気量)の百分率で表したものです。
例えば、温度30度の大気は1?あたり30.4g、20度では17.3g、15度では12.8gの水蒸気を含むことが出来ます。
いま、気温20度で湿度80%の大気1?には、17.3gx0.8=13.6gの水蒸気を含んでいます。
この空気を30度まで上げた場合、水蒸気量は変らず飽和水蒸気量は30.4gまで変るので、湿度は45%まで下がる事になります。
一方、15度まで気温が下がった場合、飽和水蒸気量は12.8gですから0.8gは大気中に含みきれず露となって壁面に付着します。これが結露です。
日本では乾燥した木の含水率は約11%から17%の範囲にあり、大気中の湿度が変化した場合、木の含水率はこの湿度と平衡しようとして吸湿し、周囲の空気から水蒸気を取り込みます。逆に室内の湿度が低下するときには含水率を下げようと大気中に水分を放出します。
木は大気に比べて水分を保持する能力が大きいので木材中の僅かな水分の出入りだけで含水率と平衡するまで湿度を変えることが出来ます。このことは大気の湿度をほぼ一定に保つ事が出来る事を示しています。これが木材の調湿作用のメカニズムです。
たとえば、木代で囲まれた4mx4mの広さで天井高さが2mの部屋(32?)を考えた時、この空間の壁体の面積は64㎡になります。
この空間の温度が20度、湿度60%だった場合、大気中の水蒸気量は332gです。
ここに100gの水蒸気が加わった場合、湿度は78%になるはずです。しかし、この空間を囲む木材が僅か1mmの厚さでも約25kgあり、100gの水を全て吸い尽くしても含水率は僅か0.4%程度増えるに過ぎないのです。したがって、湿度の増加は1%に満たないのです。
以上、少し難しい、結露なしの快適な暮らしを実現する木の持つ特性です。
森のにおいで癒されます
新しい木材には木の香りがあり、その香りの成分には人の心に安らぎを与え、ストレスを抑える力があるといわれています。
森林浴でおなじみのフィトンチッドを暮らしの中で体験できます。
私のログハウスは夫婦2人と柴犬のゴン(5歳半)1匹で、年間概ね300日間を暮らしています。
日常では「香り」を感じることは余りありませんが、旅行などで数日家を空けた後に戻って、ドアを開けた瞬間フィンランドパインの心地よい香りが迎えてくれます。
この住まいは築6年ですが、貸し別荘の「山荘」「1st」などは築12年になってもこの香りが続いています。
貸し別荘のご利用者の皆さんからも「木の香りがして驚いた」という感想をいただいています。
木の感触は優しい
木は鉄やコンクリートなどに比べ温かく、手や肌が触れる場所に好んで使われます。同じ木でもバルサや桐とナラや樫では違い、軽いものほど温く感じられます。この肌で感じる温かさを温冷感といいます。
木は熱伝導率(熱は温度が高い所から低い所にへ移動する)が鉄やコンクリートなどに比べとても低い(断熱性が高い)ので、手が触れたときに手の表面温度を逃がさず暖かく感じるのです。
フィンランドパインの床板は心地よいぬくもりを感じさせます。
ログハウスの音響効果
是非、大きな声で歌って見て下さい。
音楽鑑賞にも最適です。
部屋の中で音を出すと、壁面に音が当たり、その一部は壁の表面で反射し、残りは壁の中を通り抜けます。この間に一部は壁の中に吸収されます。
心地よい空間、特に音楽を楽しむ部屋を得る為には適当な音の響きが大切です。この響きは残響時間で決ります。コンクリートは音をそのまま跳ね返すので、残響時間が長く、うるさく感じられます。
しかし、全ての音を吸収すると余韻が残りません。これに対し、木は高い音を適度に跳ね返すので音楽を聴くだけでなく、会話もなごやかなものにする事が出来るのです。
心地よい暖かさは保温(蓄熱)効果
二居所生活(横須賀と那須)をしていて、強く感じることは寒い那須の「家」の方が温かい横須賀の家に比べてはるかに心地よい温かさを実感できる事です。
それは室温が高くなり過ぎ、熱源を切った時と、朝起きた時に顕著に感じることです。
横須賀では各部屋にガスストーブかエアコンが設置されていて、部屋ごとに暖房をしています。例えばガスストーブをつければ部屋はすぐに暖まり、温度を20度に設定していても暑く感じます。しかし、それを切ったと同時に室温が下がっていくのが感じられるのです。
こんな状態ですから、朝起きるときの室温は10度以下があたりまえです。
しかし、那須のログハウスは外気温がマイナス5度程度でも、朝の室温が10度以下になった事はありません。しかも熱源は基本的に2.8Kcalの石油ストーブ1つです。
また、この石油ストーブ1つで一部屋だけでなく家中の室温を20度に保ちます。
さらに、玄関ドアの開閉や空気を入れ替える為に窓を開けても、締めたと同時に室温が元の20度近くまで戻ります。
これは、単に断熱性が高いということでは説明できません。
魔法瓶のように気密性が高ければ、容器の断熱作用で内容物の温度を一定に保つ事ができますが、住宅ではそのような機密性はありません。このような場合は壁材料の断熱性が高いことと、壁自体の熱容量(質量x比熱)が大きなことが重要になります。
例えば、発泡スチロールは断熱性は木の3倍ですが質量はなく、コンクリートは質量はあるが断熱性は木の十分の一ということになります。
ログハウスは柱を横に積み上げて壁体を構成しますから、大きな質量を持ちます。まして、M&Nのログは妻壁(三角形の壁)までログ材で造りますので、その蓄熱性は大きいのです。(ログハウスに暮らすをご覧下さい)
エコ住宅(「ログハウスは最も環境に優しい」家です)
最近は地球温暖化に代表される環境に優しいというキーワードがもてはやされています。
「家」に特化しても、「植林をしている」から環境に優しいとか、高断熱だから「省エネ」で地球に優しいなどといううたい文句が毎日TVから流されています。
しかし、その住宅に使われる材料を作る為に消費されるエネルギーやそれに伴って排出されるCO2、製造過程で排出される廃棄物の処理に伴う大気・水質・土壌への影響などを考えると、素直に「なるほど」とうなずけないのです。
いわゆる「プレハブ住宅」。実は私が23年前に建てた家も大和ハウスの「メルベーユ」とうALC外壁の軽量鉄骨造りのプレハブ住宅です。
この家の材料を拾って見ると、ALCは珪石、セメント、生石灰を高温高圧の蒸気養生釜で養生し板の内部に多くの気泡を発生させた水に浮く材料です。鉄骨には、土台回りに溶融亜鉛めっき版。柱やブレース、梁には塗装。それら全てをボルトで締め付けます。
内部はGWを充填した木枠フレーム。その上に12mm厚の石膏ボード。それに壁紙を貼り付けます。
玄関ドアや窓・網戸・雨戸はアルミサッシや鋼板。室内ドアは合板にビニールの表面加工がしてあります。
これらの材料を製造する過程でどれほどの電力や資源を使い、それに伴って発生するCO2は?
ちなみに、各種材料を製造する過程で消費するエネルギー(炭素放出量)を比較すると、鋼材・とアルミニウムと人工乾燥材では、鋼材が190倍、アルミニウムが780倍余りで、いかに木材が環境に優しいかが分かります。
さらに、製品(家)を取り壊す時やそのリサイクルを考えた場合、他の材料に比べはるかにエネルギー消費は少なく、リサイクルは容易といえます。
以上の観点から見るとログハウスという「家」は、ほとんどが天然素材である「木」で出来ているのですから、これほど環境に優しい「優等生」はありません。
国産材とフィンランドパイン
「国産材は日本の風土に合っている」といって、国産材の優秀性を強調する事があります。しかし、それは、日本人が国産材を気候風土に合わせて上手に使ってきたということであり、必ずしも外国材より優れているということではありません。
同じすぎや檜でも「○○産の杉」は板材として最高とか「○○産の檜」は構造材として優れているなどと、その用途に合わせて機能が発揮できるなら、何処産であろうと外国産であろうと区別はないと思われます。
明確な優劣があれば是非知りたいものです。
ラップランドパイン
北緯66度を超える北極圏に育成する欧州アカマツをその地域名称から「ラップランドパイン」と呼ぶ事があります。
同じ欧州アカマツですが、極寒地で育成する為、年輪が細かく詰んだ「硬い」「丈夫」「貴重」な高級な「木」のように言われることもあります。
NIINIKOSKIに聞いてみると、「木が大きくならず、数量が揃わない」「材質的には変らない」「価格も変らない」と言います。また、「中央フィンランドのパインが一番良いと思う」とも言っています。
そういえば、世界一のログハウスメーカのホンカも自社の山林は中央部にあり、「ここが一番」と言っています。
国産材との比較でも述べましたが、用途によってその機能が充分担保されれば、木の優劣を取り立てて強調する事は無い様に思います。(無論、M&Nのフィンランドパインは年輪も密で割れも少ない優れものです)
先日、八ヶ岳(明野)でセルフビルドをしていた国府田さんから「完成通知」がありました。「通知」からは1年余りに渡り千葉県から通いながらログハウスを完成させた「達成感」「充実感」が溢れています。
また、奥様や娘さんとの協同作業でご家族の繋がりがこれまで以上に強くなったことを感じました。
アドバイザーが少ない遠方でのセルフビルドには勇気と決意と努力が必要です。お一人で一日考えた事もあったと思います。それらを乗り越えて1年余りで完成させたことは本当にすごいことだと思います。
完成おめでとうございます!!(と言っても、デッキ材が少し不足している為、デッキに若干の未完成部分があるそうです。・・・部材が入荷次第お届けする予定です)
沢山の写真もお送りいただきましたので、ご本人のお了解の下一部を公開いたします。その出来栄えをとくとご覧あれ!!
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